東京大学 編入学試験受験記
こんにちは, kagamiz です。
この度東京大学工学部 計数工学科の編入学試験に合格致しました。
長い受験期間で, その間何度も挫けそうになりましたが, 結果として実って嬉しいです。
後輩に向けて, 少しでも参考になればと思い受験記を記すことにしました。
受験するに至ったきっかけ
中学生の頃から, 人に何かを教えることが好きで, コンピュータを使うのも好きだったので, 高専で勉強をした後に高専の先生になれたらいいなあと思い高専に入学しました。(でもこの頃はゲームを作るのもいいな, と思っていて, ゲームクリエイターになりたいという思いもありました。先生のほうが思いは大きかったけど。在学中に絞ろうと思っていました。)
入学してから, 所属した ICT 委員会という部活を通して, プログラミングコンテストの存在を知り, それに魅了されました。
それからは, 大学でプログラミングコンテストに出題されるような問題の背景にある理論について勉強したいと思うようになりました。 はじめのうちは東工大に編入するつもりでいました。
ですが, 東大に編入したなとりうむさんから東大の話を聞き, 東大でも同じような勉強ができることや, その他たくさんの魅力を教えて頂き, 志望校を東大に変更しました。
また, 志望学科を 2 つまで希望できるのですが, ぼくは計数工学科に単願しました。
初期状態
僕はハーフなので, 小学校の頃は アメリカンスクール に通っていました。 算数の授業や理科の授業も全て英語でした。 とはいえ, 幼稚園までは日本の幼稚園にかよっており, 家では日本語でしか会話をしないため, あまり英語が身についているか実感のないまま卒業しました。 6 年生まで本当に苦労しました。
また, もともと数学が好きなので, 小中学校では数学の勉強に力を入れていました。なぜか小学校で1次方程式の解き方を勉強していました()。
中学校の頃は, 周りから検定試験をたくさん受けるよう言われていたのでそれに従ってたくさん検定を受けていました。 中学校 3 年生の時までに 英検, 漢検, 数検 でそれぞれ 2 級 を取得しました。
高専 1 年生時の TOEIC IP 試験の成績は 855 点 (L : 460, R : 395) でした。
3 年次の高専の到達度試験では, 物理で 380 点, 数学で 465 点 を獲得しました。
1, 2 年生
とくに編入に向けて勉強はしていませんでしたが, 1 年生の春休みには, 線形代数に興味があったので, 川久保先生の線形代数学の本で線形代数を勉強していました。
2 年生の頃は情報オリンピックやパソコン甲子園などのプログラミングコンテストに力を注いでいました。
3 年生の頃
東大についてなとりうむさんからの話を聞き, 志望校を東大にしました。
とりあえず 東大の過去問に目を通しました。 所感は以下のとおり。
英語 : 今のままでも何とかなりそう。
数学 : ベクトル解析と複素関数が出題されている。。。 どちらも沖縄高専では授業で扱わないので, 独学しないといけないことを知る。
物理 : まったく歯がたたない。 授業で扱った力学や電磁気は微積分の知識を用いないもので, 3 問目に出題されているような分野は授業で扱っていない。途方に暮れる。
物理が本当に課題でした。とりあえず毎年力学と電磁気は出題されていることがわかったので, この 2 つを時間を書けて丁寧にやって, 3 問目の分野は広く浅く勉強しようと考えていました。
3 年生の冬〜春
複素関数の勉強を始め, なんとか留数定理まで勉強しました。 多価の関数については出題されないと思い勉強しませんでした。
また, 関東八大学合同編入説明会 に参加した。 東大以外の大学でも面白いことができるということをしれたり, 編入を志望している高専生がたくさんいることを知ることが出来ました。
4 年生の夏
<数学>
東大の物理工学科に編入合格したおちゃかんさんからの勧めで数学検定の 1 級を受けることにしました。ここで微積の復習や速く計算する練習ができてよかった。(結局合格点に 0.5 点届かず落ちましたが。。。)
<物理>
Cubic くんと夏休み期間中に物理の問題集を解き進めて, 進捗を確認しあおうと提案する。進捗は Studyplus を使って管理することにしたが, ぼくが記録が面倒になり Studyplus を使うのを断念してしまった。。。
教材としては基礎物理学演習(1)を使った。 夏の間は主に力学を勉強しましたた。
4 年生の冬
<英語>
単語力をつけようと思い, twitter でおすすめされた鉄壁をメインで使うことにした。
読解の練習として, 色んな英文学作品・英語小説(Holes やDoomsday Conspiracy, The Hunger Game など)を読んだ。
<数学>
Cubic くんと, H12 年〜 H26 年までの東大の編入試験の過去問を解く会を実施した。
1 回の会までに 1 人 1 問といて, 解いた問題を相手に解説するという流れで進めていった。
それとは別に, 編入試験対策用の数学の演習書を使い勉強した。
<物理>
基礎物理学演習の解答の解説だけを読んでもあまり理解できなかったので, 標準的な教科書として, 琉大の前野先生の物理の教科書を購入した。わからないところは適宜その本で補完した。
過去問でわからないところ等は学校の物理の先生に頻繁に聞きに行った。
物理も, 数学とおなじく過去問の解説会を実施した。
4 年生の春
この頃から卒研の準備が忙しくなり, 結構勉強時間が確保できなくなってきていた。
<英語>
筑波大学も滑り止めで受験する予定だったので, TOEIC の勉強をする。
公開試験を受けて, 915 点 (L : 495, R : 420) を獲得する。
引き続き鉄壁の勉強をする。
<数学>
過去問を解く会で数学をするくらい。いままでに解いた過去問を振り返ることもあった。
<物理>
数学とおなじく過去問の解説会を引き続き実施した。
また, 力学の勉強に区切りがついたため , 電磁気の勉強をした。
5 年生 〜 受験まで
学校の課題や研究室のゼミなどがあり, 春休みよりさらに時間が取りづらくなっていた。
<英語>
引き続き鉄壁の勉強。たまに英語の本を読む。
英語の過去問を解いたものを, 英語科の先生に添削してもらったりする。
他にも, 文法系の本で知識を補強する。
<数学>
知識があやふやになっていた所を復習した。
<物理>
電磁気, 力学の復習をする。 過去 2 年間の編入試験では熱力学が出題されていたので, 熱力学の勉強を始める。
1次試験受験当日
試験の感触とか。
<英語>
自由英作文が論理パズルの問題で, 問題文を日本語に訳してもそのパズルが解けなかった。
これでペースを乱されてしまい, 読解問題の答えが中途半端になってしまった。
感触としては 6 割は絶対あって, 7~8 割くらいじゃないのかなと予想。
<数学>
計算がハードだったのと, 見たことがない問題に手が止まったのが相まって, 5 大問すべてを完答することができなかった。後に計算ミスをしていることにも気づく。
感触としては 7 割くらい。
<物理>
問題の内容は控えますが, どれも僕が苦手とする分野でまったく手が動かなかった。なんとか少しは勉強した内容で埋められた。
感触としては 3 割あるかないかくらい。
こんな感じだったので, 物理の結果のせいで落ちると思って1次の合格発表まですごくヘコんだ。
2次試験
その後, 1 次に合格していたことがわかり, 非常に驚く。研究室の先生に面接練習をしてもらう。
実際の面接は和やかな雰囲気で 10 分くらいで終わった。 質問内容は以下のとおり :
- 志望動機(最適化について勉強したいと言った)
- どのように現実の現象を数理計画のモデルにすることができると思うか
- 基本的なアルゴリズムと応用的なアルゴリズムのどちらが好きか
- やりたいことが決まっているようだが, 志望する研究室はあるか
- アジア太平洋情報オリンピックではどのような問題が出題されたか
- プログラミングコンテストではどのようなプログラムを書くのか, 言語は選べるのか
試験結果
7 月 24 日(金) に 2 次試験の結果がわかり, 1 次合格者全員が通ったことが分かった。
一緒に勉強していた Cubic くんも合格していたし本当に嬉しかった。
成績開示の結果
8 月 5 日 (水) に成績開示が来たので点数を載せます。
英語 : 353 / 500
数学 : 432 / 500
物理 : 147 / 300
英語は思った通りの点数でした。ちゃんと論理パズルを解きたかったけど。。。まあいいや。
数学と物理は思ったよりだいぶいい点数でした。特に数学がだいぶ高い。。。どういう採点方法なんだろう?
英語と数学で物理をカバーしきれてるし、よかったよかった。
まとめ
振り返ってみると, この合格は 1 人では勝ち取れないものだったと思います。
理数系の科目だけで見ると, 沖縄高専はどうしても他高専よりも授業で劣ってしまいます(代わりに英語系の科目が圧倒的に他高専よりも多いです)。
ぼくはそれを自分の周囲の人の力(先輩や先生たち, 同級生)で補いました。
特に, 同じ大学を受験する仲間を 1 人でも見つけられれば, つらい周囲の環境でも打破出来ます。
コンスタントに勉強していくのは苦手でしたが, 比較的早めに取り組んでいたのでなんとかなりました。
とりあえずしばらくは休んで, その後は高専でやり残した事が無いといえるように色々経験していこうと思います。
みなさん, 本当に応援有り難うございました。
これから受験をする後輩たちへ
僕が「やってよかった」「できればよかった」と思った点を記します。
・受験勉強はきちんと計画を立てて始めよう。
受験勉強に着手するのはとても良いことですが, 漠然とモチベーションがあるときだけにやっていると, 前に勉強した内容を忘れたり, 長期間かけて全然勉強が進展していなかったという事態に陥ります。大変マズいです。
そのため, きちんとした勉強計画を立てることが必須だと思います。 ぼくも一時期は 週次目標 としてブログに載せたりしていました(が, 結局 12 月以降は自分の携帯にメモをするのみでした。)
計画を立てるときに大事なのは, 自分のキャパシティを知る ことです。毎日ずっと勉強するとストレスが溜まっていくはずです。(少なくとも僕はそうでした。)
自分が最大で 1 日どれくらいなら勉強できるかというのを考えて, その7 ~ 8 割くらいをコンスタントに勉強し続けるというのがいいんじゃないでしょうか。残りの 3 割は休憩などをして, 心身を労るのが大切です。
僕は早い段階から受験勉強に着手して, 結構 1 日あたりの勉強量は減らしていました。
・勉強する仲間を見つけよう。
同じ学校内で同じ大学を受験する仲間がいれば, お互いを高め合うよう勉強をするといいでしょう。
僕の場合は同じ学校には居ないものの, Cubic くんの存在が大きかったです。だらけそうになっていた時は彼の Studyplus の記録などを見て自分を奮い立たせていました。
受験勉強は確実に心身を蝕むので, 自分の周りの環境を大切にしましょう。
使った本
<英語>
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イメージや語源・語根など, いろんなアプローチから英単語を覚えられるよう工夫が凝らされています。
CD付 新TOEICテスト990点攻略 (新TOEICテストスコア別攻略シリーズ 5)
- 作者: 濱崎潤之輔
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TOEIC の問題演習だけではなく, 実際にリスニングの問題を書き取るディクテーションの設問もあったりして, それはそれで力になりました。
例解 和文英訳教本 (文法矯正編) --英文表現力を豊かにする
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大矢英作文講義の実況中継―高2~大学入試 (実況中継シリーズ)
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- 作者: 岡裏佳幸
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- 英語小説など
長文に慣れるためにたくさん読んでいました。英米圏の小学校高学年〜中学生が読むくらいの小説の語彙が自分に一番合っていました。
読んだ作品には The Saga of Darren Shan (ダレン・シャンシリーズ), Fudge シリーズ, Pride and Prejudice (高慢と偏見) などがあります。
<数学>
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言わずと知れた森北の問題集です。誤植や詳解略が大量にありますが, それに目をつむれば大量に問題演習ができる良書です。
また, これらの本は各節の問題が A, B, C と分かれているのですが, A が基礎確認, B が応用問題, C が編入試験に出題された問題 となっていて, 活用の幅がとても広いです。
とくに, 微分方程式についての問題は相当マニアックなものが載っているので, 編入試験対策にはピカイチでしょう。
線形空間と応用数学以外の全分野はこれらでカバーできます。
大学編入試験問題 数学/徹底演習(第3版)-微分積分/線形代数/応用数学/確率-
- 作者: 林義実,小谷泰介
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高専から編入を考える場合の演習書のバイブルです。これも多少誤植はありますが, それを見つけるのも力になると思います。
高専の数学問題集よりも圧倒的に編入試験で出題された問題が乗っています。 ただ, こちらも線形空間と応用数学については手薄な気がします。
- 作者: 川久保 勝夫
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2010/08/20
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1 年生の頃から使っている愛書です。 線形代数の概念をイメージできることを目標として書かれていて, ジョルダン標準形までの線形代数の概念が扱われています。(結局ジョルダン標準形はまだ勉強していないけど。)
線形空間の知識や問題演習はこの本で補いました。 それら以外の線形代数の問題 (対角化だったり) も載っています。
- 作者: 表実
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1988/12/08
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3 年生の春に使っていた複素関数の本です。演習が中心でとても勉強しやすかったです。
- 作者: 上野健爾,高専の数学教材研究会
- 出版社/メーカー: 森北出版
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ベクトル解析, 複素関数, フーリエ級数, フーリエ変換, ラプラス変換の応用数学分野について載っています。問題も結構載っていて便利。
<物理>
基礎物理学演習 (1) (ライブラリ工学基礎物理学 (別巻=1))
- 作者: 永田一清
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- 作者: 永田一清
- 出版社/メーカー: サイエンス社
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皆が使っている物理の演習書ですが, あくまで微積分を使った物理を一度は勉強していることが前提として書かれているように見受けられて辛かったです。
わからないところはネットの記事を参考にしたり, 学校の先生に聞いたりしました。
熱力学や流体力学(!!), 量子力学(!!!) も載っているので, これらの分野を広く浅く知るにはぴったりではないでしょうか。
- 作者: 前野昌弘
- 出版社/メーカー: 東京図書
- 発売日: 2013/02/08
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力学や電磁気のわからないところはこれらの本で補強しました。
ただ, これの本は受験のためだけに使うにはもったいないくらい丁寧に概念が書かれているので, 入学するまでにもう少しじっくり読もうと思います。
- 作者: 浜島清利
- 出版社/メーカー: 河合出版
- 発売日: 2013/04
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- 作者: 浜島清利
- 出版社/メーカー: 河合出版
- 発売日: 2013/05
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高校範囲の復習に用いました。問題を解くテクニックなども書かれていて魅力的です。
- 作者: 柴田尚志
- 出版社/メーカー: 森北出版
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森北の電磁気の演習書です。演習が抱負なのは当然のこと, 大まかな概念の理解もこの本で間に合います。非常にオススメです。
- 作者: 今井功,高見穎郎,高木隆司,吉沢徴,下村裕
- 出版社/メーカー: サイエンス社
- 発売日: 2006/09
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有名な力学の演習書です。力学は不安だったので基礎物理学演習の他にももう一冊やろう, と思い手をつけました。
その他
勉強会時に解いた過去問の回答をだれでも見られるようにしました。 作者は僕と Cubic くんです。ミスが大量にあると思われますが, あくまで参考程度で利用してください。また, 過去問は各自適切な方法で入手してください。
https://drive.google.com/folderview?id=0B5z0zLCn4zflZE5nSDdMRVNMemc&usp=sharing